溶けた自己

Soluble Self

水に溶ける人形の肌。凛とした樹木の肌。それらが重なって見えた。

何層にも折り重なった粘土が作業工程を巻き戻すように剥がれ、徐々に原型が崩れ生命感を失っていく。人形は水の波紋にすら影響を受けてしまうほど力無いが、その姿は樹木のように静かで堂々としているようにも見える。その様子を映像作品にした。本作品では等身大の人形が樹皮を纏い、映像を写したディスプレイを持っている。人の形に縛られた人形は樹木の身体を夢見、新しい世界観を望む。

MIKUBUDDHA

初音ミクはネットの海の底で解脱する。

現在、初音ミクはネットカルチャーにおいて大きな影響力を持っている。もはやその存在はただの楽器やキャラクターではなく新たな社会的アクターと捉えることができる。システムでありながら声を持ち身体を付与された初音ミクはいつどこにでも現れコンポーザーの主張を代弁する。彼女の中に形成される世界観は、ユーザーが曲を再生するたびに再構成される。この柔軟な世界観をナムジュンパイク「非思量」のオマージュ作品として昇華し表現した。

Mirror Face

風景や環境によって歪む身体を持ったらどのような世界が構成されるだろうか。環境が変化していき何度も形が変わることで自分の体の境界線を認識できなくなっていく。自分の体の中心すら捉えられなくなっていくのかもしれない。その時、認識する世界は変形する自身の身体によって証明される。

溶けた自己

自身の形が保てないほど柔らかくなった身体は、自身を支えていた地面を伝って広がっていく。粘性を帯びた身体は地を這うことで地形を再現し認識する。知によって構成された世界観が存在価値を失い、何も考えず、ただありのままの世界を認識する。


           アーティストチーム-間- 「生物と人間とコンピュータの間で」



猪瀬 暖基

これまで制作した作品の紹介をしております。主に人形やメディアアートに関係した作品制作を行なっております。 twitter: https://twitter.com/NF4629 instagram: instagram.com/inshrk46

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